décalcomanie

2018.08.13 (Mon)
C


時々ふと不安になる

伸ばされた腕のまたその先で伸ばされた綺麗な指が

僕じゃない誰かを実は求め彷徨っているんじゃないかって

その雰囲気は無意識なのかも知れない

なのに誰彼惹き込んでしまう

その度に僕は笑顔を作り一つだけ溜息を零す

こんな人どこを探してもいない

こんな人が僕だけを見ているなんて信じられなくても

────いいじゃないか


---


「どした?」

帰りの車中で響く心地いい声音。
こんなに相手を見ている人がいるだろうか。
面白くなくてそう抗議したら、「特別だから」なんて答えが返って来て赤面した事を思い出した。

「何が?」
「や、何か変じゃねぇ今日?」
「そ、んなことないです。」
「そう。」

流れてく見慣れた街を見ながら答えた。

「機嫌悪いの?」
「悪くさせるような事したんですか?」
「や、してねぇけど。」

いつもとちょっとだけ違う雰囲気に、前の方から「喧嘩か?」って何故か嬉しそうなマネヒョンの声が聞こえる。

「喧嘩なんてしてない。」

そう、喧嘩なんてしてない。

喧嘩になんて、ならないのだから。

信号待ちで止まった窓の向うに、屋台で寄り添うようにしてる男女が見える。
冬場ならブルーシートに覆われたような空間は、今の時期それらは取り除かれていて道端に直にテーブルがいくつか並んでいた。

何だか、あの日の事を思い出した。

冬の寒かったあの頃を───


---


「チャンミナ!」

そう勢い良く部屋に飛び込んで来たユノヒョンに、飲みかかってたジュースを零しそうになった。

「びっくりした、どうしたんですか。」
「ああ、わりぃ。や、ジェジュンは?」
「え?」
「何か機嫌損ねちゃってさ。」
「あー…」

そう言えば。
さっき収録から帰って来てからヒョンの姿を見ていない。
でも、その理由は何となく解っていた。

「コンビニでも行ってるんじゃないんですか?」
「はぁ?マネヒョンといないと危ねぇじゃん。」
「…僕に言っても知りませんよ。」
「あっと、そうだよな、ごめん。」
「いいんです。…多分、拗ねてるだけだと思いますよ?」
「何で?」
「さっきの収録で一緒になった女性達が原因なんじゃないかと。」
「はい?」
「…ユノヒョンはそういうの疎いですもんね。」
「てか、別に普通に共演者…」
「ぶつぶつ言う前に探しに行ったらどうですか。」
「え、あ、おう。」

来た時と同じ音をさせて部屋のドアが閉まって。
残ってたジュースがやけに温く感じた。
この変な感じは何なんだろう。

ユノヒョンはリーダーで、例え今の相手が誰であろうと同じ態度だったはずだ。
それが解っているはずなのに、何だか素直にそう思えない。
もやがかかったみたいに見えない答えを考えるのを放棄して、立ち上がった。

「ジュンスヒョン、コンビニ行って来ます。」

リビングには残りの2人のヒョン達がいて、TVゲームを始めたところだった。

「え?チャンミナ一人で大丈夫なの?」
「大丈夫です。」

気持ち程度の変装をして。
これをしなかったからと言って、他のヒョン達ほど騒がれない事も解りきっていた。
たかだかそこまでのコンビニに行くくらい、全く問題ない。

それ以上は止めない2人に「行って来ます」と残して、宿舎を出た。
韓国の2月は痛いくらいの寒さだ。
持ってたマフラーを口元までぐるぐると巻いてエントランスを出ると、
案の定僕に気付くも声を挙げる人はいなかった。
これが先に出た2人の時は凄かったんだろうなと、少しだけ同情してしまう。

彼女らの前を通り過ぎる時、聞こえた言葉。

「なんだ、マンネか…。」

こんな現実も解りきっているし、想定内だから特に反応する気も起きない。
でも、少しだけ心が軋んだ気がしたけど気付かないフリをした。

ユノヒョンは誰にでも優しい。
ユノヒョンは平等だ。

なのに、こんな何気ない一言にですら。
相手がジェジュンヒョンに向けたものなら。
きっと許しはしないんだろうな、と漠然とそう思う。
2人の関係は良く解らないけど、でも誰が見ても仲が良くて誰も入り込めない事だけは解る。

あと少しでコンビニってとこまで歩いてくと、手前に屋台が出ていて。

「あ。」

そこに見つけた2人の姿に、歩みが止まる。

楽しそうに、本当に嬉しそうに笑顔の2人がいた───

高級なものを食べてる訳でもないのに、やっぱり幸せそうで。

酷く、泣きたくなった───

「っ。」

そして気付いたんだ。

僕は、誰よりユノヒョンに構って貰いたかったんだって。

そのまま踵を返すと、来た道をただひたすら走った。
走って走って。
向かう途中で見上げた夜空に見た星が綺麗だったなんて、まるで嘘だったみたいに。

目の前が暗く々霞んだ。

僕がユンホを初めて意識した夜───


---


「…チャンミナ?」
「え?」
「何回も呼んだんだけど。」
「あ、すみません。」
「いいけど、俺んち来るよね?」
「…今夜は辞めと───」
「マネヒョン、2人俺んちで降ろして。」
「ちょ、いいって言ってない。」
「何か問題でもある?」
「ない、けど…」

こんな変な感覚の時にユノと傍にいるときっと、言わなくていい事まで言ってしまいそうだ。
自分でシム・チャンミンと言う自分が解るまで時間がかかったけれど、今では何とか上手く気持ちを抑えられるようになった。
だけど、ユノといると。
自分でも気付かない内に被ってた仮面を結果剥がされる事になって、収集付かなくなるから。
こういう時は一緒にいない方がいい。

「やっぱり、自分ちに帰ります。」
「なんで?」
「なんで、ってゆっくり休みたいし。」
「ダメ、俺んち。」

そんなやり取りをしてる間に、見慣れた地下駐車場に車が滑り込んで。
やっぱり見慣れたエレベーターホールの前で、車が停まった。

「んじゃな、2人とも。明日は11時に迎え来るから。
…寝坊すんじゃねぇぞ。」
「…その間は何ですか。それに僕はうちに…」
「あー、チャンミナうるさい。
それ以上言うとユノが本気で機嫌悪くなるから、黙って降りとけ。」
「っ。」

ユノはさっさと降りてエレベーターホールに足早に歩いて行く。
僕が迷うなんてことは全く考えてないみたいに、後ろを一度も振り返りもしない。

何となく、何となく。

ただ、何となく。

悔しかった───

ただ、そう…子供みたいに悔しい───

僕が降りるのを確認すると車はさっさとその場を離れた。
駐車場にタイヤの音が響いて。
そのキュルキュルと言う音を聞きながら、出た一言は我ながらあまりにも幼い。

「何で、僕には優しくないんですか…」

でも、止められなかった。

「ユノは、全然優しくなんかない。あの時もあの時もあの時も───
今だって!」

だんだん大きくなってしまう声に、先を行ってたユノがゆっくりと振り返った。

「他の人には優しいくせに。
───屋台で笑ってたくせに、…二人でっ、僕は…、」

ユノがあの人に向ける笑顔は誰に向けるそれよりも輝いていた。
優しさに溢れていて、大事なものを扱うみたいに慈しむみたいに。

あの人が自分より遅れたら、何度も何度も振り向いてその手を伸ばした。

「…僕には振り返らないじゃないですか、」

言ってる事が支離滅裂だと自分でも解る。
でも、どうしても。
さっきみた光景と、あの日の光景がリンクして苦しくて仕方ないから。

訳が解らない事で自分が見えなくなるくらい、誰かを好きになるなんて思いもしなかった。

「こんな風にしたのは、ユノです!」

ユノと出会わなければきっと、こんな苦しい思いがしなくて済んだはずだ。
ずっと零れださないように閉ざしてた心の奥の奥を。

ユノが開けた───

「ユノが…」

ただ、悔しかった。

確かな年月を2人で過ごして来たにも関わらず。
それすらなかったかのように…
あの人よりも劣るかもなんて思いたくもないのに、思い知らされて。
自分ばかり想いが募り、コントロールが利かなくなる。

ただ、悔しくて、
ただ、憎らしくて───

「どうしたの。」

気付いたらユノが目の前に立っていた。
その綺麗な瞳の中に自分の姿が映っているのに、どうしてもどうしても───

「おいで。」

あ、と思う間もなく腕を引かれ。
エレベーターの中に引き込まれた。
そして、そのままユノの腕の中に抱き込まれる。
微かにする煙草の匂いが僕を包み込んで、堪えていたものが溢れ出しそうになるから。

「っ、放せ…誰か人が見たら、」
「俺の部屋まで止まんないの知ってるでしょ。」
「っ、でも、」

目的の階に着けばやっぱり腕を引かれたまま、今度はユノの部屋に引き込まれた。
そのまま玄関の壁にユノの両腕で囲われる。
所謂、今流行りの「壁ドン」なのにユノがやるとシャレにならないくらい様になって。
ぐっと近づくその小さい顔に思わず息を詰めた。

「で?どうしたの。」
「…どうもしてない。」
「どうもしてなくて、そんな顔するの?」

どんな顔だよ───

解るのは自分の気持ちがひっちゃかめっちゃかな事だけだ。

「優しくない?屋台?振り返らない?なに。」
「なんでもない、です…」
「───なんでもなくねぇだろ、チャンミナ。」
「っ。」

ユノの声のトーンがすっと落ちた。
機嫌が悪くなる時の合図だ。
なのに、僕を見つめるその目はいつになく優しくて。

限界だった───

「だ、って…。ユノは、振り返らなくても僕が黙ってついて来ると思ってるでしょ?
あの人の時は、…沢山たくさん振り返ってたのに。」

すんと鼻をすすると、ユノが少しだけ困ったように目尻を下げた。

「…いないと思えば、飛び出してった。」

もう一度すんと鼻をすすると、今度はその目が優しく弧を描いた。

「そして、並んで一緒に、」
「───解ったから。」

そう言いながらユノの指がぎゅっと僕の鼻をつまんだ瞬間、耐え切れなくなった涙が零れた。

「どうして今それなんだか。ったく、ビビらせんなっつーの。」
「………。」
「俺、ちゃんとお前見てるでしょ?解んない?
優しくない?めっちゃ優しいと思うけど、自分で言うのも何なんだけど。」
「………。」
「お前がいなくなったら、誰より一番に探しに行くよ?
そして、…見つけたら、2人で屋台行く?」
「…茶化すな。」
「茶化してるように見える?」
「っ。」
「泣くな。」
「誰のせい、ですか…っ。」
「俺か。」

あははとユノが笑う。
憎らしい綺麗な笑顔で、また悔しい。

「こんなに一緒に色んなとこ行ってるのに、屋台がいいのチャンミナ?」

ユノが誰かと行った所を僕と行って記憶を上書きしたいと言ったら、
引くだろうか。
その前にそんな女々しい事を考えた自分に目を背けたくなる。

でも、多分。

でも、絶対。

人を好きになると言う事はこういう事なんだ。

「俺んち来ないとか言うからさ、心配するじゃん。」
「………。」
「その前から今日は何か変だったし。」
「そんな事、」
「あるだろ。いつの事思い出してんだか、ったくチャンミナは。
可愛すぎだろ。」
「だから、可愛くないっ…」
「ほら、もう泣き止んで。」

そう笑ってユノの袖がごしごしと荒っぽく僕の涙を拭う。

「こんなに涙もろいとかファンは知らないだろうな。」

そのどこか得意気な顔はなんなの。

「俺はチャンミナしか見てない。
それは解ってると思うけど?てか、あからさまに優しくすると突っぱねるくせにさ…
誰も見てないとこだとそんな風に可愛くなるなんて、色々我慢できねぇんですけど。」
「何言ってんですか、」
「今夜も一緒に風呂入る?」
「遠慮しとく。」
「おっけ、じゃあ湯船張るか。」
「っ、いいって言ってない!」
「はいはい、チャンミナのダメはいいって事だもんね。」

軽い音をさせたかと思ったら、唇に温かい感触がした。
それは目を瞑る間もなく、ユノの長い睫がゆっくりと閉じて開くのが見えた。

「お?耳まで真っ赤。」
「うるさいな。」
「いい加減慣れたら?”ユンホがここまで来れたのは俺が隣にいたから”、なんだろ?」
「っ、なに言って…」
「あんな事さらりと言うくせに、こんなキスじゃないみたいなキスで真っ赤とかさ…
可愛いなぁ、もう。」
「ちょ、ユノ苦しいってば…」
「ん?もっかいする?チュウ?」
「え?や、ちょっ…ユノ待っ…」

やっぱり優しく触れるだけのキスは、また僕の涙腺を緩くした。

僕の手にユノの手が重なって、ゆっくりゆっくりと絡んでく。

今、ユノが欲しくて僕が欲しい相手が誰なのかと確認するみたいに。
不安なのは自分だけじゃないんだと、伝えてくれるみたいに。

それは酷く温かくて。

やっぱり放せないと心から思った────。



END






OMG!(。Д゚; 三 ;゚Д゚)ウェェェ

ユノを想い涙するちゃーたんが何より大好きなので(偏愛
しかし、なぜ泣かさないとラブラブに行けないのかな(真顔

恋愛してると訳もなく涙が出る事ねーですかい?
遠い記憶を呼び起こしてみれば、ワタクシにもそんな頃がありました(=∀=)←聞いてない

ぐるぐるちゃーたん大好物です♡



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コメント
某サイトのブロガーをしておりますミュオンと申します。
他のサイト様を覗いたり読んだりすることはないのですが…久しぶりにランキングを見て気になって初めてお話を読ませて頂きました☆
ツキカさんのお話、とても読みやすくて胸がぎゅっとなります…
久々にこれは…!というホミンなお話に出会えてうれしく思いました!
リアル大好きです(笑)切ないお話も大好きで…もちろんぐるぐるちゃーたんは大好物ですよ…!
なんだか素敵なお話に出会えてうれしくて思わずコメントを残させて頂きました☆
…コメントをすることが滅多にないので緊張しています(笑)

またお話を読みに来ます☆
ありがとうございました。
ミュオン | 2018.08.13 18:22 | 編集
ミュオンさま

初めまして。
こんな僻地へお越し頂きありがとうございます。
とても有名なブロガーさまからコメント頂いて、ドキドキしてます(汗
そんな方に、うちのホミンを褒めて頂き嬉しいです!

これからもちゃーたんを泣かせて(チャミペンですが)、ぐるぐるさせてユノに掬い上げてもらう…
そんなホミンを書いて行きたいと思います(偏愛)♡

私もこういうこと自体が6年ぶりくらいなので、お返事もどう書いていいのか右往左往で(笑)
変な文章ですみません!

同じ県民として(小声)、どうぞ仲良くしてください。
ありがとうございました♡

ツキカ | 2018.08.13 19:01 | 編集
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