Signal .11

2018.11.21 (Wed)
この手の中に

思うままにくるみ込んでもいいのだろうか

この真っ白なひとを


Signal .11


Y
急にトイレと立ち上がったチャンミンに違和感を覚えた。
ここに着いてまだそんなに経ってもいないし、言うほど飲んでもいない。

「あのさ、チャンミン調子悪いとか言ってたか?」

情けないが、最近のチャンミンの様子を把握出来るほどの余裕がなかったのは事実だ。
自分の気持ちを留めることに精一杯で、誰かを思いやる事なんで正直出来てなかった。
こんな事を本当は誰より彼女になんて聞きたくなかった。
チャンミンと噂が立ち、恐らく2人の間にはそういう事が実際あったのだと思う。
それを考えただけで、大人気ないとは思うが彼女に嫉妬してしまう。
だからこそ、さっき2人して約束があると言った時に無理にチャンミンを誘う事は辞めたのだ。
自分が傷つきそうで、怖かったから───

「何か、さっき2人で居た時もあんまり飲んだり食べたりしてなかったです。…食欲がなさそうな感じで。あんなに食べる事が好きなはずなのに。だから、調子悪いのかなって少し気になってました。」

ごくりと空気を飲み込んだ。

こういう光景を随分前だが見た気がした。

そう、あの二手に分かれたあの頃───

「っ。」
「こっちに来るのも、本当に焦ってる感じで。」

チャンミンは本当に俺から置いて行かれると思ってるんじゃないのか。
違うとどれだけ言葉で言ったとしても、正直物理的な距離を取ってしまったのは自分の方だ。

チャンミンを傷つける気なんてなかった。
ただ、自分の持て余す感情を誰よりチャンミンに知られたくなかったし、そのことで傷つけたくはなかったから───

その時、ポケットに入れていたスマホが振動した。
嫌な予感が過り急いで画面を確認する。
マネージャーから───

ぐらりと視界が歪む気がした。

一瞬躊躇したあと、通話をタップした。

「もしもし、ヒョン?」
『おー、ユノか?』
「うん、どうしたの。」
『いやさ、チャンミンから連絡があってさ。迎えに来いって。ついさっき、そこに連れてったばっかりだったのに。お前ら何かあったのか?』
「…何もない。」
『なら、いいが。あと数分で着くからチャンミンに伝えてくれ。電話に出ない。』

考える余裕なんてなく身体が動く。

「ごめん、俺とチャンミンちょっと抜けるから。会計はカードで支払っといて。」

そう言ってテミンにカードを渡した。

「あの、チャンミンは…」

踵を返した俺の背中に彼女の言葉が届く。

「お前が心配する必要なんてないから。」

振り返らないままで答えた。

そうだ、心配するのは俺の役目で俺だけのものだったはずだ───

キャップを目深に被り、その上からフードをさらに被った。

自分が情けなくて堪らない。
勝手な我儘のせいで、チャンミンの体調を気遣ってやることさえ出来てなかった。
傷つけないと思ってやったことが、逆に相手を追い詰めている。

「ホント、俺…情けねぇ。」

チャンミンの誤解を早く解きたい。
そうじゃない、何度も言ってる通りその手を放したりなんかしないんだと───

「っ。」

その時手に持ったままのスマホがまた振動した。
躊躇わず、誰が相手かも確認しないまま通話ボタンを押した。

「ヒョン?チャンミンは?店にはいないみたいだけど!」
『あー、今乗せた。店から出て迎えに行く方に歩いて来てくれてた。』
「じゃあ、そこにチャンミナはいるんだよね?」
『いるいる、安心しろ。』
「そっか、良かった…」
『でも、何か気分悪いみたいだから薬局寄ってから部屋に連れて帰るからな。お前はまだ、ゆっくり───』
「俺も行くから。だから、迎えに来てくれ。」
『…おう、分かった。じゃあ、俺は無理だから事務所に連絡して誰か車回させる。』
「うん、ありがと。ヒョン…チャンミンを頼むよ…」
『分かってるから。そんな情けない声出すな。』

あの頃とは違うんだから

そんな風に言葉はなくとも言ってくれたようで、その強い口調で少しだけ救われた気がした。



to next.


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すみません、またもや短いな(;''∀'')
キリがいいのでここまでで。


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