いちごちゃんのごむ。

2018.11.12 (Mon)
Y


─── カシャ。

最近のお気に入りは、
写真を撮る事。

その時の思いが色あせても、すぐに取り出して見れる切なさが好きだ。

本格的なのも好きだが、
持ち運べて簡単に操作出来るヤツが楽でいい。

仕事に行く時は、
当たり前みたいに自分の持ち物に含まれる。

そして、今の俺の被写体は。

その人、ただ一人。

今だってカメラの調子を見るフリをしつつ、実のところはその人を中に収めている。

その人は。
俺に「嫌」だと言われた長い前髪を、額の上で一つに結んでいる。

しかも、それが何故か赤いいちごが付いた、ゴムだ。

グレイリネンの開襟シャツを、VのTシャツの上から羽織り、下は細身の膝までの紺のコットンパンツを履いて。

そのしなやかな身体をソファに横たえ、ノートに何かを書きとめている。

俺とおそろいの割と太い縁の眼鏡をかけてるその顔からは、表情ははっきりとは読み取れないけれど。
細いペンを噛んで必死に何かを考えてるみたいだ。

前髪を結んだその可愛らしいゴムとは、真逆の大人っぽい着こなし。

そのギャップに口元を緩めずにはいられない。

外らの光が差し込む、広いリビングで。
眺めのドレープが、開いた窓から入り込む風に揺れて優しい空間を作り出す。

そんな愛しい人の姿を、少し離れた場所から見つめる幸せ。

─── カシャ。

「──── ユノ。」
「ん~?」
「…なに、撮ってるんですか?」

視線はそのままで、声だけで俺の動きを制する。

妙に勘が強い、
最強の俺の年下の恋人。

「え?ん~、撮ってないよ。カメラの調子見てるだけ。」
「嘘ですね。」

口元にあるペンを、前後にとんとんと動かし唇に当てながら。

ずばりと言い放った。

「な、嘘じゃないよ~。故障してないかな~と思ってさ。」
「へ~、じゃあ中身見せて下さい?」

そう言ったかと思ったら、チャンミンの身体がぎしりと音を立ててソファから離れ。

その細い身体が、俺ににじり寄る。

「何だよ、コレ俺のだぞ。何にも撮ってないってば~。」
「じゃぁ、見てもいいでしょ?」
「ちょ、っあ…あー…」

ばっとカメラを撮られ、手際よく中身を見られた。

ピッピッと画像をずらしてく音。
それとは対照的に、一言も漏らさないチャンミン。

悪い事をした訳でもないのに、何でか心臓が煩い。

「…ユノ。」
「ん?何も撮ってないでしょ?…チャンミンは撮ってないよ?」
「確かに…僕は、撮られていないですねぇ。」
「でしょ、でしょ?」

なのに、じりじりとリビングの大きな窓へ追い詰められた。

どんっと勢いよくガラス窓に腕を突かれ、それに囲われた形になった。

「…あれ?何で、そんなに怖い顔なのかな…チャンミナは?」
「………。」

無言のまま、見せられた内側の部分。
そこに映りこんだ、たった今撮ったと思われる写真。

「ユノ、コレは?」
「そ、っれは~…」
「何で、いちごなんですか!!」
「だって~~~。その、いちごのゴムが気になって気になって。」

案外ロマンチストだって事は十分解っている。

俺が一度「嫌」だと言った長い前髪の事を気にして、俺の好きな物で一つにまとめてる。

その感じが、自分勝手だとは思うけど。
お前に、そんなつもりはないかも知れないけど。
俺の為だと思えて、仕方がない。

それが嬉しくて、何となくこそばゆくて。
だけどそういう感情を知られたくはないから。

だから、今だけはそのせいにして。

「はぁあ?」

自分を撮るなと言っていたくせに、現実にそうだと怒りを隠せないチャンミンを見て。

すぐにでも、この腕に抱きしめたくなった。

「だって、撮ると怒るだろ。」
「当たり前…仕事でどんだけ撮られてると…」
「─── 噴水!!」

自分の目の前でゆらゆら揺れる、その前髪が気になってしょうがない。
思わず、両手で掴んで左右に引っ張った。
そう、丁度…噴水みたいに。
「………。」
「あ、…怒った?チャンミナ、怖いなあ…」

ガラスには腕を突いたまま、身体を曲げて下を向いて何も言わなくなったその人に。

結局は不安になって、すぐにその顔を覗き込んだ。

「チャンミナ?ゴメン、冗談言い過ぎた?」
「ふ……」
「……ふ?」
「ふ……あはははは!!!ってか、何ですか!っ、そのユノの顔はっ、はははっ…は…」

口元を押さえつつ、いつもみたいに笑うその人に。

少しだけ安堵して、沢山嬉しくなった。

「な、何だよ~。俺、そんな変な顔してた?」
「あはは…し、してたっ、何で、真顔だったんですっ?は──…」

二人でいる時のチャンミンは、静かな時もあればこうやって楽しさを身体全部で表現する事も、少なくない。

ただ、あの頃よりそれをメディアを通じてファンに見せる事は。
極端に減ってしまったけれど。

だからこそ、本当の意味で俺だけが見れる顔だ。

「チャンミナっ!!笑うなっ!!」
「だって、おかしっ、スパスタのユノなのにっ…ひ──っ…」

そうやって俺の傍で笑ってくれる事が、何より嬉しいから。

「うりゃっ。」
「うわっ…」

両手を掴んで数歩進み、チャンミンの膝裏に自分の足をかけた。

床に引かれたシルクのラグの上に、その身体を横たえる。

毛足の長いそれが、チャンミンの身体をやんわり包み込んだ。

「笑いすぎだろ。」
「あは、すみません。ふふっ…」

そう言いながらまた思いだし笑いをする、その人の全開になった額に唇を寄せながら。
チャンミンの右手に持ったままのカメラを、そっと取り上げた。

「でも、俺はチャンミナが笑うと、嬉しいけど。」
「ユノ?」
「その笑顔が守れるなら、何でも…─── する。」

チャンミンの瞳に映り込んだ、自分に誓うように。

思わず口をついて出た。

嘘偽りない、
紛れもない。

─── 本心。

しゃわっと布が動く音がして、チャンミンの長い腕が俺の首に絡んだ。

「同じですよ。─── ユノ?」

今までとは違う、色めいたトーンで耳元で囁かれた。

それが合図かのように、視線を合わせたら。

当たり前みたいに、その唇へ吸い寄せられた。

「チャンミナ、眼鏡。」

言いながら、そっと顔から外してやる。

遮るものがなくなった瞳で、改めて見つめ合うのはかなり恥ずかしい気がする。

唇が。
触れ合った瞬間に微かに浮く顎の感じや、膝をゆっくりと立てる仕草に。

一気に、この年下の人に全部を持っていかれる気がして。

その顔の横に両肘を付いたまま、柔らかい感触を味わった。

「ねぇ、チャンミナ。」

唇をそっと離して、まだ触れ合うほどの距離でその名前を呼んだ。

向きを変え、
自分の腕の中にチャンミンを包み込む。

「はい?」
「コレ、このゴムさ、どうしたの?」
「も、らいました。」
「誰に?」
「怒りませんか?」
「は?なに、俺が怒る相手なの?ってか、そういう深い意味があるの?」

急激に不機嫌になった自分が嫌で。
ぴたりと合わさった身体を離そうとすれば、すぐにそのチャンミンの腕が俺を捕まえた。

「違っ…」
「じゃぁ、何で俺が怒ると思うんだよ。」
「それは…」
「………。」
「相手が、シウォニヒョンだからです。」
「は?はぁあ──っ!!!また、アイツかよ!!!」

最近見にいったスジュのライブでも、何故かチャンミンとアイコンタクトを取ってた。

先にあったロスでの公演の時も、ほぼ自由行動は一緒だったはずだ。

同じ事務所の同僚だが、単なる男としては子供っぽいと思いつつも複雑な相手だ。

それが分かってるから、
チャンミンもすぐには言わなかった。

「は──っ。」
「ユノ、気に障りましたか?」
「んあ?や、別にいいよ。もう何か、たかだかゴムだしね。それ気にしたら、俺ホントにちっさいでしょ。」

目の前で今もぴょんと跳ねる前髪、そしてそれを結ぶ、いちごちゃん。
何か、アイツから貰ったんだと思ったら無償に腹が立って来た。

違う、シウォンだからじゃない。
相手がきっと、誰でも俺はこうなるはずだ。

たかが、いちごのゴムで?

「は、マジ俺どんだけだよ。」

片腕でチャンミンを抱きしめたまま、自分の頭をぼさぼさと掻いた。

チャンミンの長い脚が、俺の脚に絡みつく。

腕の下からチャンミンの腕が通され、腰に回されたそれをぎゅっと自分の方へ引き寄せられた。

「ユノ。いい、匂い。」
「んあ?そう?」

顔を埋めたまま、くんと俺の胸にチャンミンが唇を寄せた。

「好き─── 、ユノ。すごく、すごく…好き。」
「うん。俺も。」

滅多に自分からは気持ちを言わないその人からの、
俺だけへの言葉を確かに受け取って。

チャンミンの肩に顎を乗せる形で、今度は俺が抱きしめ返した。

「チャンミナ。」
「はい?」
「やっぱ俺が違うゴム、買ってあげる。」

しょうがない。
気になるんだから、もういい。

「え?あ、…ははっ…お願いします。」

可笑しそうに腕の中で、細い肩を揺らしながら。

ぎゅっとしがみついてくるチャンミンが、
どうしようもないほど愛しくて堪らないから。

今日も俺は戦います。

俺の今日の相手は、
いちごちゃんのごむ。

日によって、その相手は変わる。

俺はこの腕の中の人を、それらに奪われないように日々、努力をする。

あああ、美しい恋人を持つと苦労する。

とてもファンには見せられないなと、改めて思った休日の午後。



END


---

いちごちゃんのごーーーむっ!!
ギャグだwwwwwwごめんなさいwww
長いチャンミナの前髪から広がったお話です。
何か、うだうだで申し訳ないでっす←
ユノはチャンミンに「嫌い」って思うとこはないと思うって分かってるけど、あえて(鬼)
思いっきり笑うチャンミナ、すごく可愛いから!!
あー、楽しかった!!←


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