可愛さと自尊心の間で .2

2018.11.22 (Thu)
Y

俺を甘やかしてくれ───

こんな恥ずかしい言葉酔ってでもなきゃ言えないと思った。

「ったく、まだ酔ってるんですか?大丈夫?」
「あー、平気。」

本当はさっきからみんなが心配するほどは酔っていなかった。
確かにシウォンから受け取ったカクテルは強くて、飲んだ先は頭がくらっとしたのはしたが。
それで自分を見失うほどじゃなかった。
ただ、「酔ってる」を言い訳にしたかっただけ。

迎えに来て貰った車に乗り込み、宿舎へ送って貰う。
普段だったらチャンミンは”おやすみなさい”とあっさりと俺から離れて、自分のうちに帰ってしまうだろう。
でも、今夜はこんな俺を1人置いて帰るはずがないと変な確信と期待があった。

隣に並んで座った一番後ろの後部座席で、俺はチャンミンにぴたりと身体を密着させる。
潔癖にも近い人が自分の好きなようにさせてくれる、それは優越感にも似た嬉しさがあった。

「ほんとに、こんなデッカイ子供いないでしょうよ。」
「子供じゃないし。」

チャンミンが動く度にいい匂いがする。
匂い───香水なんて付けないのに。

「…お前、何か付けてる?」
「え?あぁ、はい。」
「買ったの?」
「貰いました。」
「は。誰に。」
「え。」

思わず合う視線。
そんな驚くような事を言ったつもりはないのに、チャンミンが一旦フリーズした。

「なに。」
「いえ、何か気にしてくれてんのかなと思っちゃって。」
「はぁ?」
「あんまり、そういうのに関心がないでしょうユノは。」
「…そういう香水とかには関心がないけど、付ける相手には関心があるんだよ。」
「あ、…そうな、んですね。」

チャンミンは常々どうやら自分の方が想いが強いと思ってる節がある。
だからホジュ二ヒョンの事でも、心のどこかで「しょうがない」って諦めてしまってる。
それに加えて、俺がチャンミンに対して変に”兄”としてのプライドみたいなものがあるとも分かっている。
だから簡単に「~だから」と飲み込めてしまうんだ。
そうじゃないのに、こういうところはいつも自信なさげで…あの頃と変わってない。

「で。誰に貰ったの。」
「え、あー…」

言い淀むチャンミンにピクリとこめかみが動いたのが自分でも分かった。
ついでに酔いも随分冷めて来たみたいだ。
ついさっきまでのフワリとした感覚が随分なくなって来た。

「日本で。」
「日本?」
「ツアーのスタッフの人から。」
「…誰。」
「誰って言ってもユノは知らないと思います。」
「は、何でお前が知ってるのに俺が知らないとかあるんだよ。って言うか、何でそれを使ってんのって話。」
「…ユノ、怒ってるんですか?酔ってたんじゃないの?」
「もう冷めたし。俺の知らないヤツから貰ったりすんな。」
「…ですよね。…すみません。」
「んなの考えりゃ分かるだろうよ。俺がホジュニヒョンから貰ったもの身に付けててもお前平気なの。」
「───。」

あ、俺ずるい。
チャンミンの一番痛いところを押した。
一番気にしてる相手を引き合いに出して、傷つけるって事分かってるくせに何やってんだって。

「ユノは、…結構普通にやってますよね。」
「へ?」
「ホジュンさんの服を着て帰って来たりしてるでしょ。…貰ってはないけど、借りて。」
「あー…。」

ヒョンのうちに泊まりに泊まりにみんなで行った時に着替え持ってくの忘れた時とか、結構ある。

「まぁ、もう慣れましたけど。」
「チャンミナ…。」

こういうところが自分のダメな部分だと思う。
相手に対しては怖いくらいの嫉妬心を剥き出しにしても、相手にそれをさせない。

”いいだろ、何とも思ってないし”
”いいだろ、俺にとって大切なヒョンだし”
”いいだろ、そんな気持ちある訳ないんだし”

そういう言葉で壁を最初で作る───

それなのに俺の気持ちを分かれなんて、矛盾しすぎだ。

「…ごめん。」
「だから、慣れたってば。…謝らなくていいです。」

そう言いながらチャンミンは窓の方を向いてしまった。
自分の馬鹿さっぷりに泣きたくなる。
俺はチャンミンが同じことしたら、今みたいに″慣れた″なんて絶対言えない。

「──チャンミン。」
「何ですか。」
「俺から離れてかないよな。」
「はい?…そうして欲しいんですか。」
「な、訳ねーだろ。…ただ、何か俺、結構面倒くさいヤツかなと思って。」
「…それが、ユノなんだからしょうがないです。」
「こっち、向いて。」
「なんで。」
「顔、見たい。」

その言葉にチャンミンがゆっくりと俺の方を向いた。
堪らず、頬に指を滑らせる。

「ちょ、何する気ですか。またマネージャーに何か言われる…」
「キスくらい、いいだろ。」
「だ、駄目に決まってるじゃないですか…」

さすがに外ではしないが、車内では何度もチャンミンにキスをした。
その度に目ざとくマネージャーからチェックが入るのだ。
それをどうやらチャンミンは気にしているらしい。
別にマネージャー達にしてみればいわゆる、日常茶飯事的なことだから気にも留めていないのに。

「ヒョン!」
「あ?」

だったらと、前に座るマネージャーに声をかけた。

「俺、今からチャンミンとキスするから。だから、見るなよ。」
「あーはいはい、勝手にやっとれ。」

どうしても今、チャンミンにキスしたい。
そう思ったらどうやったってしたい、男なら分かるだろ。

「っちょっと、ユノ!何言って…」
「ほら、ちゃんと了承も得たしね?今、したいんだもん。なぁ…」
「…やっぱり、まだ酔ってますよ。」
「うん、そうかもね。」

言うほど酔ってはいないし冷めてはいたけど、そのせいにして思うままにキスをした。
触れるだけのつもりがつい夢中になりすぎて、さすがにマネージャーからダメ出しを食らったけど。
それでも、顔を真っ赤にして大きな呼吸を繰り返すチャンミンに気分が良かった。
強請ってまで何かをしたいなんて、自分の中にそんな欲求があったんだと改めて気付かされるほど。
チャンミンに対してだけはどこまでも欲しい熱は引いてはいかない。


---


「…ニヤニヤして気持ち悪い。」
「あ?」

結局あの後、収まらない熱を2人で共有して濃い時間を過ごした。
甘やかして欲しいと言ったとおり、チャンミンの中で俺はどうにもならないほどあやされた。
それは言葉にするのは難しく、泣きたいくらい気持ちよくて。
それを口にすれば、顔をこの上なく真っ赤にさせ腹を軽く殴られた。
どの仕草取っても可愛くて仕方ない。

そして、今。
運動して腹が減ったと言う俺からの要求に溜息を付きつつ、夜食のラーメンを作ってくれている。
そのチャンミンの後ろ姿をテーブルに座って見てるだけなのに、さっきから俺の顔がニヤついてると文句を言って来る。
自分では分からないが、多分緩んでいるのは間違いない。
なぜなら、自分の好きな相手が自分の長めのトレーナーを着て、下はハーフパンツだけで俺の為に料理を作ってくれてるだなんて男のロマンでしかない。

「何でそんなニヤついてるんですか。」
「あぁ?気のせいだって。」
「そう?はい、出来ましたよ。卵入れる?」
「うん、お願い。」

ラーメンの鍋に器用に卵を割り入れて、ぐるぐるとかきまぜてくれる。
そして、器に取り分けてくれて目の前に差し出された。

「熱いから、気を付けて。」
「ん。」

アツアツのラーメンをすする。
湯気が立ち上って、顔の辺りが加湿されて鼻水が出て来る。

「あっつ、…でも、うまっ。」

ただのインスタントラーメンなのに。
食べる相手によってそれは特別な物へと変わる気がした。
これも口にすれば「クサイ」といつもチャンミンからケチを付けられる。

「ユノ、鼻水出てる。」
「あ?ほんと?」

手でこすろうとしたら、それはチャンミンに制止され。
すぐさま、ティッシュで拭きとられた。

「子供みたいですね。」
「っ、子ども扱いするな。めっちゃ熱いの食ったら誰でもこうなるだろ。」
「はいはい、そうですよね。」

くつくつと肩を揺らして湯気の向こうでチャンミンが笑った。

可愛い───

そんなチャンミンを見てると急激に涙腺を刺激されて、思わず泣きたくなった。
こんな感じがあまりにも幸せで───
チャンミンからの仕草ひとつで、あぁ自分はこの人に愛されてるんだと。
誤魔化すように、無心でラーメンをすする。
さらに鼻水が出て来たけど、「ほら、また。」って言いながらチャンミンが拭いてくれた。

「ありがと。」
「いいえ。ただのインスタントなのに、一緒に食べると美味しいですね。」
「…うん。」
「でも、あんまり食べちゃダメですよ。すぐユノは太っちゃうから。」
「運動する。」
「僕も付き合います。」

普段、昔ほどではないにしろ気を張って仕事をしているせいか、うちでの脱力感はハンパない。
勿論、それを誰かに知って欲しい訳でも見せたい訳でもない。
でも、きっとそういうのをこのチャンミンは無意識のうちに受け止めてくれてるんだろう。

俺を癒す力を持ってる───

「なぁ、チャンドラ。」
「はい?あ、お代わりしますか?」
「ううん、もういいよ腹たまったし。」
「そう?じゃあ、あとは僕が全部食べちゃいます。」
「わー、痩せの大食い。」
「否定はしません。」

本当に美味しそうに食べるチャンミンを見てるだけで色々満たされて来る。

俺を癒してくれて満たしてくれる

そんな相手は世界中のどこを探してもこの人しかいない───

「チャンドラ。」
「はい?」
「俺ね、お前に目に見えて甘える事出来ないんだよね。」
「…あぁ、その話。もういいのに…ホジュンさんのことは、」
「違う、聞いて。」
「…分かりました。あ、ちょっと待っててください。」

そう言って立ち上がると、目の前の空になった食器や鍋を一気に持ってキッチンへ向かった。
そして、数分後その手には───アイス。

「アイス?」
「そう。辛いの食べたら甘いの食べたくなりませんか。」
「確かに。」
「ネットで見てて凄く美味しそうで、マネヒョンに買って来て貰っちゃいました。」
「え、そうなの。でも、お前あんまり甘いのは好きじゃないんじゃない。」
「これ、ユノのです。僕はそれ一口貰えたら十分なんで。何か限定らしいです。どんな味かな…」

並んでソファに座り小さいアイスのカップを開けた。

「あ。」

綺麗なピンク色のアイスがなぜかハートの形にくぼんでいて。
2人して顔を見合わせて笑った。

「凄いな、ハート型とか。」
「女の子なら喜びますよね。」
「え、俺も結構嬉しかったけど。」

一口すくって口に入れると、ほどよい酸味の効いた甘いイチゴ味が口いっぱいに広がった。

「どう?」
「んまい。」
「そうですか、良かった。で、続き。」
「ん?あぁ、…うん。」
「話を遮ってすみません。」
「いや、いいよ。んと…俺さ、どうしてもずっとお前の「兄」みたいな感覚で格好付けて来たから、目に見えて甘えたり出来ないんだよね。って言う…」
「…はい。」
「多分、お前が気にしてるホジュ二ヒョンにするようなこととか、…抱っこされたりっての?ああいうのも、お前とは無理かもしんない。」
「はい。」
「でも、それは…ホジュ二ヒョンに甘えられてチャンミンには甘えられない、そういうのとは違うから。ホジュ二ヒョンに見せられてお前に見せられないものなんて、ないし。」

上手く言えないのがもどかしい。

「目に見えるものが全てじゃないって言うか。…でも、お前がああいうの見てヤダって思ってるの知ってるから、これからなるべくしないようにしようと思うし。それに、お前には俺…全部曝け出してるよ。…ああ、もう、上手く言えねぇ…ごめん。」

分かって欲しいから───

「分かってます。」
「…無理に分かって欲しい訳じゃなくて、」
「うん、それも…分かってます。」
「チャンミナ。」
「ユノはいつだって何だって一生懸命ですよね。…僕が言ってしまった言葉ひとつに対してまでも。…僕こそ、大人気なくて申し訳ないです…。ユノがどれだけ僕を想ってくれてるかなんて分かってるくせに、まだそれ以上欲しがるなんて。…子供ですよねぇ、僕。」

こんな風にお前に謝って貰いたい訳じゃないのに。

「お前は子供なんかじゃないし、謝る必要もない。俺が───ン…」

顔を両手で挟まれたかと思ったら、チャンミンの熱い唇が軽く重なった。

「本当に、強がりでもなんでもなく分かったから、もういい。」
「チャンミナ?」
「ユノはイチゴの匂いがします。」
「ハァ?そりゃ、…今アイス食べてるから。」
「そうですね。」

滅多にチャンミンからキスをしてくることなんてない。
どちらかと言えば、俺から手を出すのがいつもだ。

「あれ?何でそんなびっくりしてんすか、ユノ。」
「いや、だって。お前からキスとか…」
「僕も男だし、相手が可愛いと思ったらそりゃぁしたくなりますよ。」
「えっ、おぉ…。」

今までの会話の流れのどこに一体「可愛い」なんていう要素があったんだ。
無意識のうちに頭の上にクエスチョンマークが飛んでしまったんだろう。
チャンミンがそんな俺を見て可笑しそうに笑った。

「分かんないですか?どこが可愛いか。」
「自分で分かる訳ないだろ。」
「ですよね。…でも、教えません。」
「ハァ?」
「だって、悔しいですから。俺には抱っこされてくれませんからね、ユノは。」
「っ、だから、それは…っ…」
「嘘ですよ。強がりでもなく、ちゃんと分かりました。でも、可愛いところは教えません。」
「何だ、お前。やっぱりドSだろ。」
「何とでも。それより、…ねぇ、ユノ。」
「何だよ。」

チャンミンの表情が可愛いマンネからいつの間にか「男」のそれへと変わった───

普段、誰より綺麗で可愛らしいくせに。

「イチゴ味のキス、しましょうか。」

今の俺を見るこの顔は───

「ちょ、待て待て。お前…何か怖いんだけど。」
「失礼な。ユノみたいに誘ってるつもりなんですけど。ほら、”チャンミナ、キスしよっか”って良くあなたが言う───」
「っ!恥ずかしいから、言うな!」
「何でですかぁ、いつもそう言って僕にキスするくせに!」
「そ、そりゃそうだけど。改めて言われると恥ずいんだよ。」
「あはは。可愛い、ユノ。」
「だから、俺のどこにそういうのがある───」
「もう、黙って。」
「───ん?んんッ…───」






それからも背中がムズムズすることを沢山言われた気がしたが、どうにも耐えられず形勢逆転してチャンミンを組み敷いた。





「ったく。堪んねぇな、お前は。」
「どういう意味ですか。」
「飽きないって意味だよ。」
「どうせ、僕は可愛くないし格好良くも振る舞えないしすぐ嫉妬するし───」
「でも、俺はそんなお前が好きだよ。」
「っ。」
「可愛くて仕方ない。」
「…ずるい、それ今日は僕の台詞だったんですよ…」
「はいはい。」
「また!すぐそうやって…」
「もう黙って。チャンミナ──、」



俺は今夜もその狭間で揺れ動く。


可愛さと自尊心の間で───


「───キス、しよっか。」




おわり

---


どっか~~~~ん!!!!
それは忘れた頃にやって来る←
しかも、なだれ込まなかった件(*´з`)
ユノが結局ちゃーたんにお手本を示しちゃう図。
ユノが可愛くて書いてて楽しかったん♡
結局はどっちも可愛いっつーね♡♡ぬるくてみあねよ~(DGZ)


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