可愛さと自尊心の間で .1

2018.10.19 (Fri)
C

「ちょ──、っと…」

″場が凍りつく″とは、まさに今、この瞬間かもしれない。

真横にいるシウォンは口元を押さえて笑うのを必死に堪えているし。
休暇で久しぶりに会った親友のキュヒョンは、恐ろしいものでも見たかのようにあからさまに目を逸らし。
ボアはそんなキュヒョンを見て笑い。
テミンに至っては表情に影を落とし、今にも泣き出してしまいそうだ。
そんなテミンの肩を抱いて慰めるミノの顔は複雑で。

つまりは、有り得ない事が起こっている───

「っ、あの…ユノ。」
「あ?」
「すみませんけど、…放して貰えませんか?」

今日は事務所のメンバーで集まっての食事会。
普段がなかなか会えないだけに、話も酒も進んだ。

その結果、ユノは自分のキャパを超える量を雰囲気に後押しされる形で飲んでしまい、いつも以上に酔いが早く深かった。
ここまでなら、まだ有り得ることで。
ただ、ここからが問題だった。

挙句、チャンミンはユノに後ろから羽交い締めされるような形で抱きつかれていた──

「あの、…マジみんな引いてるんで、ちょっと、ユノ!」
「あぁ?やらね。俺、離れねぇよ。」
「は。」

ああ、神様───

普段”俺様ンホ”などと称されている一見強面で周りをある意味強烈に遠ざけているような人が。
そんな「可愛い」ことを言うもんだから。

この状況にどう対処しようかと自分の頭がフルで回転するも、普段あまりにも起こりえないような事で対処し兼ねているらしい。

どうしたらいいのか分からない

「やだー、もうユノヤ!ちょっと鳥肌立つじゃんか!そういうの家でやりなよ!」
「あん?」
「アンタってそういうキャラだったの?まさか”ユノたん”を隠してたの?」
「なんらよ、それは。俺は”ユンホ”だっつの!」

ボアがその場にいた全員の気持ちを代弁するかのように大声でさらっと叫ぶものだから、結果みんなが「そうだ」と盛大に頷いていた。

「らいたい(だいたい)、ユノたんってなんだよぉ。なぁ?チャンミナ?俺は格好いいんだもんなぁ?」

呂律も上手く回っていない。
どれだけ飲んだんだこのひとは。
確かに横にいてあまり飲ませないように気を付けていたのに。

ふと、シウォンと目があった。
その瞬間、どこかエキゾチックで憎らしいほどイケメンの顔が壮絶楽し気に笑みを浮かべた。

「っ。まさか…」

その瞬間に悟った。
ユノがここまで酔ったのはこのひとのせいだ、絶対。

「あれ?チャンミナ、何のことかな?」
「しらばっくれんな。何やったんですか、ヒョン!」
「ええ?何もしてねぇよ?ただ”これ甘くておいしいぞ”って飲み物渡しただけだろうが。」
「甘くて美味しいって…。」

ユノの目の前にあるグラスを取ると口を付けた。
それは確かに柑橘系で甘くて飲みやすいオレンジジュースのようで、でも結構なアルコール度数のカクテル───

「ヒョン!ユノが弱いの知ってるでしょ!」
「あら~そうだったかな。弱くねぇでしょうよユノは。ただすぐ赤くなるだけ。」
「じゃあ、何でこんなに…」
「さぁねぇ~。本人に聞いてみたら?」

シウォンの言い方が少し引っかかる。
まるでユノがこうなったのには、きっかけはシウォンだったとしても他の理由がある、そう言われてる気がして。

当の本人は。
この状況を意に介することなく、僕の肩口に顔をぐりぐりと押し付けて楽しんでるようだった。
もともと”空気を読めない”と言われていたが、実は誰より敏感で回りの空気を察知するようなひとで。
でも、そうだと言いながら自分がしていることにはこれでもかってくらい無頓着。
つまりは無自覚。
これに今までどれくらい悩まされて来たことか。
大きな溜息が零れた。

「あの、ユノ。」
「ん?んん?」
「どうしたんですか。…何かありましたか。」

ユノの方に顔を傾けて聞いてみた。
自分の腹の前に回されたユノの腕がやけに熱い気がする。
その手にそっと自分の手を合わせてみた。

「ずるい。」

そう言ったのはテミンだった。
可愛い天使がユノを慕ってるのは周知の知るところで。
それは自分もご多分に漏れず。
ユノに無邪気に纏わりついて、ユノの笑顔や温かい温もりをいとも簡単にかっさらって行く。
そんなテミンに心が疲れたことも確かにあった。
でも、俺はこの後輩の事も大好きだ。
それは、ユノをとても好きでいてくれている───それも理由の大きなひとつ。
言葉では上手く言えないが、ユノを大切にしてくれる彼を嫌いになれるはずがない。
でも、申し訳ないがこのひとを譲る訳にはいかないから。

「テミナ、こら。」
「だって、ヒョン!チャミニヒョンだけずるい。」
「じゃあ、俺がしてやろうか?」
「…ミノヒョンは、いい。」
「ああ?何だよ、俺はこう見えてマンネを愛してるぞ?」
「嘘だ。だってミノヒョンはチャミニヒョンにべったりのくせに。」
「うっ、それは…」
「フラれたな、ミノヤ。」
「キュヒョニヒョン…。」
「何なら俺が抱きしめてやるぞ?」
「…キュヒョニヒョンは、いい。」
「あぁ?何だこら、ミノヤ!」
「ちょ、そういう訳の分からないやり取りやめなさい!」

最後はボアのひと言で静かになると言う。

「チャンミナ、笑ってる場合じゃないぞ。もともと、お前らが発端でこうなったんだからな。」
「シウォニヒョン、それは責任転嫁って言うんじゃ…」
「うるせ。つーか、マジそれどうにかしろ。」

シウォンの指さす先、つまりは俺の背中に今だ纏わりついたまんまのユノだ。

しかし、シウォンの言うようにユノがここまでなるのは珍しいことだ。
自分といるときは、こうなるまで飲ませないように注意はしているが。
他の友人との飲み会に行った時でも、ここまで崩れたユノを見たことがない。

何か悩みがあるんだろうか

「ねぇ、本当にユノ…どうしたんですか。何か気になることがあるんですか?」
「んあ?」
「悩みとか。」
「───ある、よぉ。」
「え?」

まさかの「悩みあります」発言に、もはや存在を無視されたも同然だった2人に一斉に周りの視線が集まった。

「ユノヤ、どうしたの?私が力になれること?」
「ぼあ。んにゃ、お前には無理ぃ。」
「えー、どうしたのよ本当に。何でも言いなさいよ。」
「じゃあ、俺か?俺が助けてやれるか?ユノヤ。」
「んー…しうぉな、無理。」
「おいお前、本当に大丈夫かよ。」
「お前らありがとな。んでも無理なんらってば…チャンミナじゃないとね…」

チャンミンじゃないとね

「え──、俺?」
「んだよ、チャンミナ。俺の可愛いぃ~ちゃんみなじゃなねぇとね。お前の嫌がることやりたくないんだけどぉ…。でも、分かってほしいぃんだけどぉ、…おれ、ちゃんと甘えてんだけどなぁ…」

その時凄い音がしてテーブルの上にあったものが跳ね上がった、

───気が、した。

実際はテミンがテーブルに盛大に手を付いた、…叩いた。

「ユノヒョン!ぜんっぜん分かりません!何言ってんですか!分かるように説明してくださいっ!」
「ちょ、こら!テミナ!お前酔ってんのか?」
「あぁあああ?ミノヒョン!僕は酔ってなんかない!ユノヒョンが、チャミニヒョンにばっかり優しくするの見て泣きたくなっても、僕は酔わない!!酔う訳ないでしょうが!!」
「いや、意味分かんねぇから。」
「とにかく!僕はユノヒョンが好きだし!だったら、分かるように説明してくださいっ!!!」
「おぉい、テミナぁ…」

大声で叫ぶテミンの横で項垂れるミノをキュヒョンが笑いながら慰めている。
何だろう、今日は「いつもの自分じゃない自分を見せる日」なんだろうか。
冗談言ってる場合じゃないのに、何だか自分の心ん中は温かい空気でいっぱいだ。

「…チャンミンが、”嫌だ”って言ったんだ。俺ととホジュ二ヒョンが、…仲良くするの見て…」
「───。」
「俺が、ヒョンに何か後ろからぁ?抱っこみないなのされたの、見たって…それで、嫌だってチャンミンが言うから…
でも、おれはお前に甘えてるよ…ぉ。ほんとうに。お前いないと、ダメだもん…おれ…」

その写真は随分前ので、それを最近たまたままたSNS上で目にする機会があった。
ユノがその人に後ろから抱きかかえられるようにして座り、気を許してる姿。
酒を飲んでるからか顔はほんのり赤くて。
だからって自分の気持ちを言うつもりはなかった。
あの人もユノをとても大切にしてくれているのは分かっていたし、またユノもとても慕っているのは知っていたから。
何かを言うつもりもなかったのに、ユノが───
あの人の前では”甘えられる”ってそう言ったのが酷く引っかかって、思わず我慢してたものが口を付いて出てしまった。
本当はその写真のユノがいつも自分の傍にいる同じひととは思えなくて───

「なに、…そんな事悩んでたんですか…」
「そんな事じゃねぇ!おまえのこと…傷つけてんなぁって自覚あんのに、…ヒョンも大切だから俺が。でも、ちゃんとお前にも甘えてるんだ…ぞぉ。でも、なんか俺、チャンミンの前だとカッコいいまんまでいたいとか思って。俺、身体でけぇじゃん?だから…お前に後ろから抱かれるとか無理っつうか。いや、誤解してほしくないんだけど、むりっつーのはぁ…」
「つまり、ホジュニヒョンには全部見せられるけど俺には見せられないってことですよね。」

言ってて傷つくな。
ユノの言いたい事は何となく分かる気がする。
ただ「分からない」って思うのは、相手が他でもないユノだから。
つまり、好きな相手だから───
ああ、本当に面倒くさい感情ばかりだと嫌になる。
嫌になるのに傍にいることも、誰かに譲ることも考えられない自分の方こそこのひとがいないとダメなんだ。

「だって、そこに拘るならホジュにヒョンよりユノヒョンのが身体大きいですよね?でも、あんなことユノヒョンは出来る訳でしょ。で、同じくらいの体型の俺だとダメって言う事はそういう事でしょ。」

きっとユノの中には譲れないプライドのようなものがあって。
こと俺の前ではいつだって、その色がはっきりするから。
だから、上手く言えないけれど、でも何となく分かる。

「気にしないで下さい。っつーか、そんな事でこんな風にならないで下さい。」
「チャンミン?」
「余計な心配とかしなくていいっつってんですよ。…分かってるから。」
「お前は!分かってねぇよ…ほんと、分かってないって…どんだけ俺が…」

背中が熱い。
ギュウギュウと痛いくらいに僕に抱き着いて来るから。
本当は俺がユノを甘やかしてやりたいと思ってるのに、その役目はいつだってユノの方だ。
どうでもいいことで悩ませて、俺はいつだってこのひとの「弟」みたいな存在でしかない。
それが嫌でもがくくせに、いつだって矛盾してる───そりゃ、ユノが甘えられる相手になれるはずもない。

「っつーかさ。そういうのこそ家でやれば?シングルの前でノロけてもいいと思ってんの?」

2人のやりとりをまさに言葉通り一刀両断したのは、他でもないボアだった。
気付くと、テミンは突っ伏して眠っていてミノとキュヒョンはかなり飲んだのかいい気分で。
ただシウォンとボアだけは今までの流れをしっかり見ていたようで、いい加減にしろと呆れ顔だ。

「そうだよなぁ、俺のチャンミナを独り占めしやがって。」
「シウォナ、それ違う。」
「あは、そうっすね。」
「チャンミナはさ、変わらず色々考えてるけど色々飲み込んだままなんだね。まぁ、そうさせてるそいつが一番悪いんだろうけど。」
「姉さん。」
「でも、チャンミナは賢いからユノの事ちゃんと分かってんのよね。だから、余計に辛いよね。」
「本当、俺もそう思うわ。だから俺のとこ来る?ユノみたいに悲しませたりしないよ?」
「シウォナ。」
「はーい。」
「簡単な事なのに本人同士でややこしくしちゃって。ユノヤ、アンタも大概にしないとチャンミンが愛想尽かして傍離れてくよ?」
「…姉さん。俺は別に、」
「こういうプライドばっかりデッカイヤツにははっきり言わないと分かんないでしょ。それを必死に守ってるユノも相当格好いいとは思うけどね、今のアンタはそーーーーうとう格好悪いわ。私やシウォナや後輩にまで心配させて、許さないからね。ああ、もう!シウォナ、飲むよ。」
「あ、はい!お注ぎします。」

そんな2人を見ながら今だ離れないユノに声をかけた。

「ユノ、飲みすぎでしょ。大丈夫ですか。」
「…うん。チャンミナ、おれさ…」
「いい。酔っ払いに何言われても嬉しくないから。」
「じゃあ、酔い覚ますから…帰ろう。」
「どうしたんですか、急に。みんなと会うの楽しみにしてたくせに、まだ───」


俺の肩に顔を突っ伏したままで言われた一言は、くぐもってて良く聞こえなかった。


「早く、うちに帰って俺を甘やかして───チャンミナ。」


───僕だけにしか



to.next..



☆。.:*・゜ライブツアー2018 Tommorow記念☆。.:*・゜
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ギャーーーーーッツ!
ち、違うの!!!
何か最近切ない(面白くない)お話ばっかりだから!!!
ここらへんで少しテイストを変えて笑えるお話にしようと思ったのに!!!
なのに…ち、違う方向へ進んだ(。Д゚; 三 ;゚Д゚)
し、しかも1話のつもりだったのに続くよぉ~~~ん(号泣)

酔った勢いで普段と違うことやっちゃう(言っちゃう)ユンホが見たくて←
いつも拍手、拍手からのコメントでの応援ありがとうございます(正座)


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