Je tadore ~after~

2018.10.14 (Sun)
──── ユノ

浮かされる熱の波の中で、何度貴方の名前を呼ぶだろう。

返事の変わりに返ってくる、

貴方の息遣いだとか、背中を滑る指先の感覚だったり。

呪文みたいに重ねられる言葉だとか、湿った汗の香りだとか。

そういうの全てが僕を包み込んで、やっぱり抜け出せなくて。

貴方の心の中を通り過ぎて来た今までの時間の全てが、
貴方と感じてる今この時間の全てが、
貴方と感じるであろうこの先(未来)にある時間の全てが、

──── 僕のものであればいいよ願うよ。


規則的に鳴り響く音で、どこか忙しなく覚醒していく意識。

耳の奥に響く、僕の名前を切なげに呼ぶ少し低めの声と、何かに掻き立てるような音の間で揺らされている感じが酷く心地いい。
目を覚ましたくはないのに、閉じた瞳の奥が否応なしに白んで重い瞼を開かずにはいられない。

「─── っう、るせ…」

俯せのまま、ベッドの上に両手を這わせる。
何の引っかかりもないその感じにどこか違和感を覚え、やっとチャンミンは目を覚ました。

あれ、いない

咄嗟に思ったのが、それで。
昨日の夜の事がじんわりと脳裏を過って、恥ずかしさと変な苛立ちとで口元を緩めた。
今だ鳴り続けるその音の正体にやっと辿り付き、画面をタップする。
起き上がる気力もなく、俯せのまんま不機嫌に返事をした。

「…はい。」
「あ、俺、俺!!」
「は?」

そこから聞こえたのは、有り得ないほど元気なその人の声。
ただ「俺」と言っただけで相手が解ってしまう事も、嫌だと思う。
なのに、他の誰も聞く事が出来ないこれが自分だけに向けられているのだと思えば、
実は嬉しかったりもする。

「何処いるん、…すか。」

同じ部屋にいるのに何故、電話してくるんだとチャンミンは思った。
でも、こういう子供じみた事をやるのもユノなのだ。
だから、呆れはしても不思議と怒りは起きない。

「えー、今ねキヨミズデラに向かってる。」
「……。」
「あれ?この発音、違うかな?
ねぇ、マネヒョンいいよね、キヨミズ…」

すぐ近くにマネヒョンがいるんだろう。
チャンミンの返事は聞きもせず、その発音が合ってるかどうかの方が気になるらしい。
そのユノの声を聞きながらチャンミンは、顔にかかった前髪をゆっくりと掻き上げた。

「ユノ。」
「ねぇ、いいよねこれで?あっ、マネヒョン俺にも頂戴。腹へってさぁ…」
「ユノ。」
「ん?こっちでいいのかな?あー、何か行きたいとこいっぱいある…」
「こら、聞け。」
「んあ?なになに、チャンミナ?」
「なに、じゃ、ねー。」
「ん?」

日本での5大ドームツアーの真っ最中で、今は大阪にいた。
4日間あるうちの今日はなか日で、いわゆるオフだ。
だから、約束していた。
──── 清水寺に行こう、と。
それなのに、自分はまだベッドの中にいる。
それなのに、一緒に行こうと言ったユノは現地に向かっているらしい。
その事実がじわじわとチャンミンに込み上げ、頭がすっと冷えて行く。

「僕も行くはずだったんですけど。」
「あー…。うん、そうなんだけどね?」
「訳を言ってみろ、訳を。」

僕を置いて行く訳を。
日本に来て、ゆっくりと行かないまでも観光するだけの余裕みたいなものは最近なかった。
本当に決められたスケジュールを消化するだけの為に来日するだけ。
だから、今日の日を実はすごく楽しみにしていたのだ。
二人で行けば目立つ事くらい嫌でも解っている。
でも、一緒にいたかった。
なのに、ユノはチャンミンを置いて一人で行ってしまったのだ。

「え、ここで言っていいのチャンミナ?」
「言って悪い理由があるんすか。」
「んーと、言わない方が…」
「言って下さい。」
「あー…」

はっきりしないユノに苛立った。
自分だけがこの日を楽しみにしていたと突きつけられたようで、余計に腹が立つ。
いつだって自分ばかりが、ユノを想っている気がして。
そう思えば、チャンミンの心は音を立てて軋む気がした。
今回の事も、別に腹を立てるような内容じゃない。
いい大人が、いい男が。
でも、駄目なんだとチャンミンは思う。
対ユノに関しては、どうでもいい事が酷く大切な事のように思えてしまうのだ。
だから言って欲しかった。
それ相当の理由で、想っているのはチャンミンばかりじゃないのだと。

「だってさ、」
「はい。」
「昨日さ、」
「はい?」
「ちょっと、無理させちゃったし?だってお前がカズさんと仲いいからさあ!あはははー。」
「────っ!…っつぅ。」

思いもよらないユノからの言葉に思わず身体を起こした時に感じる痛み。
そして、昨日の夜にユノによって与えられた「想い」の名残を身をもって痛感した。

「げ、ほら。痛い?大丈夫?ゴメンな、無理させ、」
「ちょっ…!」
「チャンミナ?大丈夫?」
「うるさい。」
「んもー、だからちょっと辛いかなと思って。黙って出て来たんだよね。」
「って、ユノぉ…今さらですけど、聞いていいですか?」
「んあ、なに?」
「近くに、マネヒョン…いますよね?」
「あははは、いるよ!当たり前じゃん。今、移動する車の中だも───」
「バカっ!」

ユノの言葉を最後まで聞かず、通話を切った。
マネヒョンは二人の関係を知ってくれていて、今さらだとは思う。
だが、そういうのを出すのがチャンミンはすごく苦手だ。
隠したい訳じゃないが、思い切り表現するのも躊躇してしまう。

そして何より昨日の夜、自分で思い出すのも嫌なほどに乱れていた。

昨日はバンドメンバーの誕生日で、ライブ後に皆でお祝いに雪崩れ込んだ。
その人はチャンミンが慕っている人であり、相手も可愛がってくれている。
だから、二次会に行こうと誘われて断る気になれなかった。
なのに、一緒に行くだろうと思っていたユノは先に帰ると言いだして。
チャンミンは結局、ユノが気になり途中で会を抜けてホテルに戻って来たのだ。

毎回なのだが、ライブ後は心身共に興奮する。
それは体験した事のある人間にしか解らない感覚だと思うが、
実際昨日も、ファンが出す思いとに煽られぐんぐんと自分の中で育つその熱が。
あからさまにするにはあまりにも恥ずかしく、でも溜めておくには大きすぎて。
ユノを誘ったのは、チャンミンの方だった。
何も考えなければユノがいつものようにチャンミンを抱き入れた形になったのだが、
会を途中で抜けて帰って来た事自体がユノを誘っていると言っても良かった。
そして、それを自分の方がこうしたかったとユノがやっぱり優しく抱きしめるその腕に、
チャンミンが理性で必死に押しとどめようとしていたものなど、簡単に開かれてしまったのだ。

こんなのは自分じゃない、そう繰り返すチャンミンにユノは。
その何倍もの多さの「愛してる」をくれた。
大安売りですね、と可愛くない事を言えば。
チャンミンにだけだよ、と当たり前みたいに返された。

その体温を中で感じて、感じるままに喘いで、まさに言葉通り。

──── 溶け合うほどに、抱き合った。

一度は起こしたはずの身体を、チャンミンはまたどさりと無造作にベッドに沈めた。
気だるさが身体中を覆っていて、何もする気が起きない。
なのに、何故かその痛みにも似た感覚が愛しいと感じるなんて、
本当に末期だとシーツを手繰り寄せながらそれを噛みしめる。

そう思った瞬間に、携帯の音が鳴った。
ラインやカカオはやっていない、故に今だに若者らしからずメールでやり取りをしている。
本当に話したい事があれば、今みたいに電話やそれ以上に一緒にいるのだから不自由はしていない。
ただ、どうしても言葉で言いにくい時だけこの方法を使う事が多いと思う。

幾つかの未読メールの中の一番上に来たそれは、今まで話をしていたユノからだった。
横になったままそれだけを開いた。

「……。」

そこにはたった一行。

”お土産買ってくるからね”

「…あーっ、もぉマジでやだ!本気でムカつくんですよ!!」

どうして、こんなに可愛いのだろう。
どうして、こんなに優しいのだろう。
どうして、こんなに泣けるんだろう。

その答えはいつだって、奥深くに在りすぎてチャンミンには解りづらく感じる。
なのに、貴方はいつでも「簡単だよ」と口にする。
そして、必ず言うから。

チャンミンにだからだよ

って。

チャンミンは持ったままの携帯で、その番号をタップした。
それは、

「もしもし。」
「あ、僕です。」
「どした、チャンミナ?ユノと出かけるんじゃなかったのか?」

ユノではなく、もう一人のマネヒョン。

「マネヒョン、ボーリング行きましょう。」
「へ?てか、清水寺は?」
「それは、ユノだけが行きました。」
「はあ?で、何でボーリング…」
「練習しないと。」

韓国でのバラエティ番組の仕事の為もあるし、土産を買ってくると言った貴方に。
僕も、僕なりの土産を用意して待ってます。

「ユノよりハイスコアを出す予定なんで。」
「えー意味解らんし、その対決。」
「いいんです、大事なんすから。…ってて…。」
「何だぁ?大丈夫か?ユノは体力ありまくりだからなぁ。」
「なっ、な、なに言ってんすか!!」
「バカだよな、お前ら~。俺たちが知らない訳ないだろ~。」
「ヒ、ヒョン!!」
「あー、ハイハイ。んじゃ、一時間後な。」

きっと、貴方はすごく驚いて…
僕よりもずっと喜んでくれるはずだから。





END




---


☆。.:*・゜ライブツアー2018 Tommorow記念☆。.:*・゜
じみーに1人祭り中です←時々滞りますw
Je tadoreの続きです。
確かユノは1人でこの時清水寺に行ったんですよねぇ。
赤い髪の写真を見た記憶が…
1人ってことでこんな妄想をしてたんだと思います。
昔から救いようがないくらい腐ってますね私(-∀-`; )


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コメント
私、実は清水寺から車でかっ飛ばしたら5分で行ける距離に住んでましてツイでこの目情と画像出た時家でジッタンバッタン暴れてましたwww(勿論馬鹿な追っかけなんてするつもりもないので行ってないですよ←当たり前)でもユノだけだったのはこういう理由だったんですね( ´艸`)ムフー
ユピ | 2018.11.19 11:51 | 編集
ユピさま

こちらにもコメントありがとうございます♡♡

うわあぁあああ!
素敵なところにお住まいなんですね!羨ましい…
今年になって家族で遊びに行きましたよ、勿論清水寺にも(いらん情報)。

いや、あの時ユノの髪が赤かったですよね。
でも、1人で…なので、腐ってる者としてはここは妄想しとかなきゃってことで書いてみたはずですwww
しかし、にわかに今だに信じられんのです。
あの風貌であのすげー人の中で目立たないはずがないんだけどぉ…と。
でも、周りにいた方々はラッキーでしたね♡
そして、ユピさん…ぐっと我慢されてさすがビギです!
そんな近くにいたらかっ飛ばして行ってみたくなりますよ(´;ω;`)
でも行かなかった、素晴らしいです。

まぁ、基本こんな妄想ばかりしてる腐ババアではございますが…
これからものんびりお付き合い頂けると嬉しいです♡
ツキカ | 2018.11.21 08:27 | 編集
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