How to start the last love .10

2018.09.25 (Tue)


Y-side


─── 夢を見た。

それこそ見分けがつかない程の、
人だかりの中で。

何の躊躇いもなく、
その姿を見つけた。

俺に気付き微笑んだその人が、
差し伸べた手を掴もうとした瞬間。

急に、
その姿が見えなくなって。

俺は、わぁわぁと喚きながらその姿を探した。

探して探して ─── 。



「…ん…。」

「あ、ユノ?気付いた?」

聞き覚えがある、
穏やかな声。

薄ら目を開けると、
そこには真っ白な天井が映っていた。

視線をずらしてみても、
大きなガラス張りの窓には見覚えがなくて。

ただ、外が真っ暗で夜だと言う事だけは分かった。

「俺。」

「うん。ここ、うち。」

俺を覗き込んだ人は、
昔の恋人。

恋人って呼べるかどうか、
分からないくらい淡いものだったけど。

「え?何で、俺…。」

ゆっくりと体を起こすと、
ミジュがサイドに座り手伝ってくれた。

「意識失くしたんだよ?」

「え。」

「だから、うちのSPに運んでもらった。
大丈夫。
バレないように、ちゃんとやったから。」

にこりと微笑むミジュに、
少しだけホッとした。

「そうかゴメン、迷惑かけて。」

「ったく!ホントだよ!!
んななるくらいまで悩んじゃって!!
しっかりしなよ!!」

「あは、ホントごめん。」

「もう!こういうユノは見たくないんだよ!!」

「うん。」

「一応、お医者様にも診てもらった。
疲れもあるんだって。」

「そうか。」

そう言われて初めて、
右腕に指された点滴に気付いた。

自分の足りない何かを補うように、
ゆっくりと体に流れ落ちてる。

「何か、温かいもの持ってくるから。」

「うん、ありがとう。」

パタパタと心地いい音をさせて、
ミジュが部屋から出て行った。

ホント、俺何やってるんだろう。

自分で勝手に嫉妬して、
相手にその気持ちを伝える事もせず。

悩んで悩んで。

体にそれが現れるほどに。

ミジュにもめいいっぱい迷惑かけてる。

「は、情け、な…。」

目頭を押さえた。
溢れ出そうなものをぎゅっと堪えて。

人を愛するってこういうものだったっけ?

問いかけても答えなんかなくて、
多分、今の俺の姿が答えだ。

しばらくして、
またあの足音がしたかと思ったら、
ミジュが顔を見せた。

「熱いから気をつけて。」

そう言いながら渡してくれた、
ゆず茶。

「…れ?これ。」

「うん、ユノ好きだったでしょ?」

「覚えてた?」

「勿論。高校でもさ、ダンスやってたじゃん?
練習終わった後、よく冷たいの持ってった。」

「そうだったね。」

微かに蘇るあの頃。
「きらきらしてた」って表現は間違ってないって、
今なら思える。

そう、何か輝いてた。

「あのさ。
ユノは嫌がるだろうと思ったんだけど。」

「うん?」

「父を通じて、事務所に連絡入れたから。」

「え。」

「だって、マズイじゃん。
隠し通せるものでもないし、別にやましい事してる訳でもない。」

「うん。」

「今日は動かない方がいいって、お医者様も言ってた。
だから、今日はここにお泊まりよん。」

「ええっ?」

そんな俺を見て、
豪快に笑うミジュ。

「なに?なんなの?
泊まったらマズイ?私から襲われちゃう?
んー、ないない。年下にしか興味ないから!!
ありえなーい!!」

わざとみたいに明るく振舞ってくれる彼女に、
胸が痛くなって。
感謝してもしきれない思いが溢れてくる。

俺もつられて笑った。

「ん?ユノは世界のユノだもん。
笑ってる方がいいよ!あはははは!って、
いつもみたいに。」

「あはは。」

「そうそう、そんな感じでね。」

俺は堪らなくなって、
彼女のその細い体を抱きしめた。

何だろう。

チャンミンに対してとは違うけど、
すごく「愛しい」って思った。

そして、ありがとうって。

俺の気持ちを察してくれたように、
静かに背中に回された手が。

ゆっくりと上下する。

「分かってる。」

って、言われてるみたいで。
泣けてくるから。

ミジュの肩にぐっと顔を押し付けた。

こんな俺は俺じゃない。

眠って、
次に目が覚めたら。

いつもの俺に戻ってるから。
だから、今だけは。

その時、
小さい音がして。

ドアが開いた。

「え、…チャンミン。」

俺の視界に飛び込んで来たのは、
髪を乱して息を切らした…

─── その人だった。





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